小学生の保護者必見、数学マニアの東大生が語る「日常生活で算数脳を鍛える」方法

 皆さんは、数学の勉強は好きだろうか。おそらく、子どもでも大人でも、算数・数学に苦手意識を抱える人は少なくないのではないだろうか。

教育・受験 小学生
画像はイメージです
  • 画像はイメージです
  • 6個入りの卵と10個入りの卵、どちらがオトク?
  • このピザ、どちらがオトク?

 現役東大生で数学ライターの永田耕作氏による『東大式 数値化の強化書』(彩図社)は、「数学を用いて、日常生活で合理的な選択をできるようにする」という目的から著された書籍だという。数学的なセンスを育むためのヒントは、幼いころからの生活に隠されているのだろうか。

 そこで永田氏に、日常生活で算数脳を鍛える方法について、寄稿いただいた。

「好き」が「苦手」になるのはなぜ

 皆さんは、数学の勉強は好きだろうか。おそらく、子どもでも大人でも、算数・数学に苦手意識を抱える人は少なくないのではないだろうか。

 筆者は全国の中学校や高校に講義を行っているが、その際も生徒から一番にあがってくる声は「数学が難しい」というものだ。科目の好き嫌いは成績にも直結することが多いため、数学をいかに好きになれるかが成績向上のカギになることは明確だろう。

 振り返ってみると、筆者は小さいころから算数・数学が大好きだった。学校の授業で勉強する教科としての「算数・数学」はもちろんのこと、それ以外の日常生活でも常に数字を追いかける子供だった。家族で回転寿司を食べに行くと、いつも皿の枚数や他に頼んだものの値段を確認し、レジでお会計をする前にその値段を1円単位まで計算する、という奇妙なゲームを楽しむほどの数字好きだった。

 2024年2月に学研ホールディングスが発表した調査結果によると、小学生の好きな教科ランキングが10年ぶりに「算数」から「体育」へと入れ替わったらしい。ここで驚くべきは、「10年間ずっと算数が1位だった」という事実である。

 この調査からもわかるように、実は小さい頃は算数が好きな人が多いのだ。それが、テストで自分の能力を点数化されたり、単純計算だけではない複雑な公式や考え方が出てきたりすることで、徐々に算数・数学を苦手と感じたり、嫌だと思うようになる人が増えてきてしまうのではないか。

 これを解決するためにはどうすれば良いのか。解決策はシンプルで、日常生活のあらゆる場面において、ゲーム感覚で「算数脳」を鍛えることである。ここからは具体的に、ゲーム感覚で「算数脳」を鍛える方法をいくつか紹介してみたい。

「算数脳」を普段の生活で鍛える

6個入りの卵と10個入りの卵、どちらがオトク?

 スーパーでの買い物で、以下のような悩みを抱えたことはあるだろう。

 「同じもので量が違う2つの商品AとBがあって、Bの方がAよりも商品の個数、内容量は多いが、その分値段も高い。そのため、どちらを買った方がお得なのかがパッと判断できない」。

 お客さんのニーズに幅広く応えるために、スーパーなどではさまざまな種類、容量の商品が売られている。それはありがたい反面、どれを買えば良いのか混乱させている要因の1つにもなっている。

 たとえば、6個入りで200円の卵Aと、10個入りで300円の卵Bがあったとする。このとき、卵1個当たりの値段を計算してみると、卵Aは1個当たり33.333…円となるのに対し、卵Bは1個当たり30円であるため、この観点では卵Bの方がお得になる。

 しかし、たとえば一人暮らしの場合や、あまり料理に日常的には卵を使用しない家庭の場合など、「10個入り」の卵を賞味期限内に使い切ることが難しいパターンも考えられる。単純な1個当たりの値段で考えるのではなく、必要な量を加味して考えた場合、どちらがお得になるのかは変わってくる。

 卵の賞味期限は2週間(14日間)であり、あなたは平均して2日間に1個のペースで卵を消費していると仮定する。あなたが一人暮らしの場合、卵Bを買ってから普段通りのペースで卵を消費していくと、賞味期限が切れるまでの2週間の間で7個しか卵を消費できないことになる。よって、残りの3個は「賞味期限が切れた後に消費する」か、「普段よりも早いペースで卵を消費する」ことになる。

 つまり、一見お得のように見える「卵Bを選択する」という行動が、「わざわざ100円多く支払って、普段食べる量よりも多くの卵を買っている」行動だと言いかえることができる。卵を普段どのくらい消費しているかを考慮しなければ、合理的な判断は下せないのだ。

このピザ、どちらがオトク?

 もう1つ、食料品の買い物を例にあげて考えてみよう。

 宅配ピザを注文するときに、直径15cmで1,000円のMサイズのピザと、直径30cmで3,000円のLサイズのピザがあった場合、どちらがお得だろうか。この問題も先の卵の問題と同じように、まず大事なのは「量を揃える」ことだ。MサイズのピザとLサイズのピザの大きさを比べ、同じ大きさあたりの値段がどちらの方が安いかを考えよう。

 MサイズからLサイズへの変化として直径が2倍になっているが、値段は3倍になっているため、一見Lサイズの方が割高に見える。しかし、実際はそうではない。次の図を見てみよう。

 直径が2倍になると円の面積は4倍になるため、Lサイズのピザの量はMサイズ4枚分となる。値段は3,000円と3枚分なので、Lサイズのピザの方が同じ値段で多くの量のピザを食べることができる。

 しかしここで注意しなければならないのは、「どのような場面、状況においてもLサイズの方がお得だ」と言い切ることはできない点だ。

 これも、あなたが一人暮らしであると考えてみよう。その場合、直径30cmのピザを食べることは非常に困難ではないだろうか。家族で食べる場合でも、ピザ以外の食べ物も用意されているケースではLサイズのピザは必要ないかもしれない。あるいは、同じ3,000円を使ってMサイズのピザを3種類買った方が、好き嫌いの多い子供たちも満足してピザを分けられる、というケースもあるだろう。このような個別の条件があったとしても、数値化した情報が事前にあれば、より合理的な判断を行えるようになるだろう。

6個入りより10個入りの方が割高の場合もある?

 ここまでの2つの具体例を見て、多くの人が持っている「量や個数が多い方が、一定量あたりの値段は安くなる」という感覚が間違っていないことを、数値化を通じて理解していただけたのではないだろうか。醤油や酢、みりんなどの調味料も大容量のものの方がお値打ちになっており、また、酒なども大きな缶の方が100mLあたりの値段は安くなっている。そのため、賞味期限の長い保存用の食品や飲料品に関しては、基本的には大きなものを買えば買うほどお得になる。しかし実は、ここに「例外」が存在するのだ。

 大きな駅や観光地のお土産屋に行く機会がある方はぜひ確認してみていただきたいのだが、お菓子の土産物などの包装が丁寧なものは、個数が多い方が1個当たりの値段が高くなっているパターンが時々見られる。理由は非常にシンプルで、数が多い方がより大きな箱に包装されることとなり、その分、余計に箱代がかかってしまうからである。そのため、お土産を選ぶ際には、単純に大きなものを買うのではなく、渡す相手やその人数に応じて最適な量を買ったり、箱を使わず簡素に包装されたものを選んだりすることをお勧めしたい。


 この「数値化」の能力は、このような日常生活のひとコマに限らず、想像している以上に幅広い場所で活躍する。数字で物事を測ることへの良し悪しは日々議論されているが、評価の指標のひとつとなることは紛れもない事実なのだ。

 算数・数学は基礎的な計算の反復練習も多く、退屈だと思う人もいるだろう。しかし、このように日常生活でいかに活用されているかを知ると、算数・数学の勉強が面白くなるかもしれない。


東大式 数値化の強化書
¥1,540
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《永田耕作(カルペ・ディエム)》

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top